
一、序文
宇都宮高農1年の時だった。松岡校長が毎朝仏壇に向って何やら唱えているのを見て何をしているのかと思った。坂口君(故人)に、「あれは何をしているんだ」と聞いたら、、「経文を唱えているんだ、般若心経と云うものだ」と教えてくれた。そしてついでに心経なるものを探してくれた。それが心経とのつきあい始めである。 戦後、本が出回るようになり、仏教関係書も目につくようになった頃再び心経を読み出していた。難しいので解説書も読んでみた。所が解説書でもよく解らない、そこでいっそ原文を読んでみようと思うようになった。 とりかゝ、ってみてすぐあれっと思った。先づ最初から
ボージ
1.で、bodhi-sattovo(坊士里之子)
2.で、ganbira(拝wugaんびら)と沖縄口臭いのが出て来たのである。
7.になると yad rupan sa sunyata ヤンドー ルー(体)ヤ ヤサ ソーンナムン
色即是空である。これは般若心経を代表する命題である。
こんなことで興味を増し素人の私だが続けることが出来た。それが小著である。 経文中に舎利子と云う言葉が2回出て来る(5、9)。この人は仏陀第一の弟子で舎利子と云えば舎利の子と云うことになるわけだが解説書では二人稱として説明されている。 この舎利子は仏書によっては舎利弗プーとも書かれている。このプーはミゝチリボージのシーヤープーのプーと同じ子と云う意味なので一応その訳語を沖縄らしいシーヤープーとした。
梵語は徳山暉純著般若心経手帖(木耳社)のローマ字綴り梵語を基準とした。

二、漢訳般若心経
心経
1 2 3 4
観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一
5 6 7
切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色
8 9 10 11 12
受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢
13 14 15 16 17 18
不淨不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌
19 20 21 22 23
身意無色声香味触法無限界乃至無意識界無無明亦
24 25 26 27
無無明尽乃至無老死亦無老死尽無苦集滅道無智亦
28 29
無得以無所得故菩提薩埵依般若波羅蜜多故心無罣
30 31 32
礙無罣礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢想究竟涅槃
33 34 35
三世諸仏依般若波羅蜜多故得阿耨多羅三藐三菩提
36 37 38 39
故知般若波羅蜜多是大神呪是大明呪是無上呪是無
40 41 42 43
等等呪能除一切苦真実不虚故説般若波羅蜜多呪
44 45 46 47 48
即説呪日掲諦掲諦波羅掲諦波羅僧掲諦菩提娑婆阿
49 50
般若心経

三、梵文沖縄口訳
1.観自在菩薩
avalokitesvara bodhi-sattvo
見下す 自由な 菩提衆生
おーばーるつく自由な ぼ一じ里之子が
avalokita、見下す。overlook、見下す。
菩薩=菩提薩埵=bodhi-sattva
=ぼーじ衆生=ぼ一じ里の人=ぼーじ里之子
2.行深般若波羅蜜多(音写)
gambira panna-parami
ta yan
深遠な 知慧 彼岸 観た やいに
拝んびら はんにあ うちわたてぃ め一に
gambira…拝んびら 拝んちゅみるん…うやうやしく
承る(今帰仁方言辞典61頁)
panna…般若(知慧)、パーリ語から漢語化し、日本
語化した言葉、仏教界では酒のことを般若湯と云う。
3.時照見
caran caramano vyavalokayati
修行 行じる 見分ける
すじょう そうゐに 見一分きたしえ一
4.五薩皆空
panca-kanda sunyan pas
yat i sma
五 かんだ(根) んなむん(空) 見る した
五ちぬかんだ一 んなむんりち ん一ちやん
5、舎利子
sari-putra
しーやーぷー(序文参照)
6.色不異空空不異色
rupan naprthak sunyata
形、体 無 別々 んなむん(空)
s
unyata ya naprthag rupan
んなむん(空) やん 無 別々 形、体
別
るーとぅ んなむんとぅ びちぇ一あらん やてぃ
別
んなむん とぅ るうとぅん びちぇーあらん
7.色即是空空即是色
yad rupan sa sunyata ya sunyata
であるるう(形、体)同 んなむん 斯くて んなむん
tad rupan
確かにるう(形、体)
やんどー るう や んなむん やてぃんなむのー
るうやるばー
8.受想行識亦復如是
evameva vedana
samjna samskara
vi jnanani
やるばーうぬば一 習 思 行 認識
やるばーうぬばー 習ゐしん 思ゐしん 爲しん 知ゆしん
9.舎利子是諸法
sariputra sarva darmah
一切の 法
しーやーぷー あるつさぬ 法やよ
し一やーぷ一(序文参照)
10.空相
sunyata a-loksana
空 無 しるし
んなむん むじるし
1oksana、しるし、相
(参)laquer、塗料、漆
IL不生不滅
an-tpanna a-nirudha
不 生 不 滅
生り一ん さん 死にん さん
12.不垢不淨
a-mala vi-mala
不 垢 離 垢
ゆぐりん さん ゆぐりん ね一ん
13.不減不増
nona na-paripurnah
いやな一 無 一杯 満
減なゐんさん 満ちん さん
14.是故
tasmat
故
やくとぅ
15.空中無色
s
unyata yam na-rupan
んなむん(空) やくとぅ ねーん るう(形、体)
んなむん やてぃ るう やね一ん
16・.無受想
na-vedan na-sanjna
無 習 無 思
習ゐしん ね一ん 思ゐしん ね一ん
17.行識
na-sankaro na-vi
j ina
無 行 無 識
するくとぅんねーん しるくとぅんね一ん
18.無眼耳鼻舌身意
na cakusu sratra grana jihva
無 眼 耳 鼻 しば(舌)
kaya manansi
身 心
眼 耳 舌
ね一ん みーん みゝん 鼻ん しばん 身ん
心
くゝるん
19.無色声香味触法
na rupa sabdha ganda rasa
無 形、体 音 臭 らし(味)
sprstavya dharm
触 法
体 臭 味 触
ね一ん る一ん 音ん かじゃん らしん 物ん
法ん
20.無眼界乃至
na caksur-dhatu yavat
無 眼 界 乃至
見る果んちんね一ん うりやか
21.無意識界
na manovi
jnana-dhatu
無 思 果
思ゐぬ 果んちんね一ん
22.無無明
na-vidya na-vidya
無 明 無無 明
じ一んね一ん むじ一んね一ん
na-vidya、無明、無知、なびじゃー、なむじゃ-
23.亦無無明尽
na vidyaksayo na vidyaksayo
無 明 尽 無、無 明 尽
じーぐさりんねーん ねーんちんねーん
24.乃至無老死
yava na jara maranan
乃至 無 老 死
やるば一 ねーん 年取ゐんちん 死ぬんちん
25.亦無老死尽
na Jara marana ksay
無 老 死 尽
やしが 年取ゐ まーしぇ一 ね一のーならん
26.無苦集滅道
na dhu-kha sam-udaya ni-rodha marga
無 とぅかー とぅが なんじ ちとぅみ
とぅーかーん とぅがん なんじん ちとぅみん ね一ん
27.無智亦無得 以無所得故
na-jnanan na-praptira aprapti tva
無 智 無 所得 無 得
ねーん しゆしん ねーん とぅったしん とぅゐしん
あらんてぃば
28.菩提薩埵 依般若波羅蜜多
bodhisattva-nan panna para mita
ぼーじ里之子や はんにあはらみた
bodhi-sattva、菩提薩埵(1.参照)
panna para mita、般若波羅蜜多(2.参照)
29.故心無罣礙
masrtya viharatya citta
avarana
よって 行 心 無障碍
あんしそうくとぅ ちむがしまさんねーん
30.無罣礙故無有
cittavarana nasti
tva
心 障碍 無 己
ちむがしまさん ね一んてぃば
31.恐怖 遠離一切顛倒夢想
atrasto 以下梵文なし
怖
うとぅるさん
32.究竟涅槃
nista nirvanah
成就 消滅
ね一ん なたん
33.三世諸仏
try-adhva vy-avasthitah sarva-budhah
3 世 在住 全 仏
みゆ ぬ あるつさぬ ふとぅき
34.依般若波羅蜜多故
panna paramitam asritya
故
はんにあはらみた そーくとぅ(2.参照)
35.得阿耨多羅三藐三菩提(音写)
an-ut
taran samyak sam-bodhini
無 上 正しく same 菩提
ぬったらー まったち そうぼーじ
36.故知
abhi-sambuddha tasma j inatavyan
へ same仏陀 故 知る
ふとぅき なたるばー やくとぅ わかゐん
37.般若波羅蜜多(音写)
Panna-parami
ta
はんにあはらみた や(2.参照)
38.是大神呪 是大明呪
maha-manta maha-vidyamanta
大 呪 大 明 呪
まはーまんた まはーびじぁまんた
maha、大、まはー、まかー、まがー、まぎ-
manta、思想、教え、圧え
vidya、明らかにする、語根vidは知るの意
用例、びじゆる
39.是無上呪 是無等等呪
anutta-manta asamasama-manta
無 上 呪 無same
same 呪
ぬじんじたまんた さまざまねーらんまんた
anutta、上のない
manta、(38.参照)
asamasama 、no same Same
さまざまね一らんとしたのは原音をとった。
40.能除一切苦
sarva-duhkha pra-sama
一切の 苦労 能除
あるつさぬ とぅーかー とぅらりーん
duhkha、悩み、苦しみ、用例、とぅ一かーぬね
ーに やまー?(26.参照)
41.真実不虚 故
satyam a-mithyatva cca
真 実 不 虚 故
さてぃむ まくとぅ んちや
satyam、真実に、本当に。琉歌、さてぃむ浮
世ぬ丸木橋渡てぃあやしさや闇路心
42.般若波羅蜜多(音写)
panna-paramitata
はんにあはらみたやん(2.参照)
43.説呪 即説呪日
mukto-manta tadyata
放たれた 呪 例えば
いゃつたるまんた や たてぃれ一
manta、思想、教え、呪(38.参照)
44.羯諦掲諦(音写)
gati gati
がてぃ がてぃ
gati、納得できる訳語を知らない。
45.波羅掲諦(音写)
para-gati
完全
ぱーらがてぃ
46.波羅僧掲諦(音写)
para一samgati
完全
ぱーらさむがてぃ
47.菩提
Bodhi
ぼーじ
Bodhi、覚(1.参照)
48.娑婆詞
svaha
すばーは-
svaha、最古、火神あぐにに由来した神秘語、火中に
供物を置く神がもとであったが、いつの間にか原義は
忘れられ、祈りの終りに用ひられる希望祈願の神秘語
となっていると云う。
49.般若(音写)
panna
はんにあ
Panna、知慧(2.参照)
50.心経
hrdaya sutran
心 糸
ちむぬいとぅ
現代語訳 インターネットウェブサイトより
★ 般若心経 新訳
超スゲェ楽になれる方法を知りたいか?
誰でも幸せに生きる方法のヒントだ
もっと力を抜いて楽になるんだ。
苦しみも辛さも全てはいい加減な幻さ、安心しろよ。
この世は空しいモンだ、
痛みも悲しみも最初から空っぽなのさ。
この世は変わり行くモンだ。
苦を楽に変える事だって出来る。
汚れることもありゃ背負い込む事だってある
だから抱え込んだモンを捨てちまう事も出来るはずだ。
この世がどれだけいい加減か分ったか?
苦しみとか病とか、そんなモンにこだわるなよ。
見えてるものにこだわるな。
聞こえるものにしがみつくな。
味や香りなんて人それぞれだろ?
何のアテにもなりゃしない。
揺らぐ心にこだわっちゃダメさ。
それが『無』ってやつさ。
生きてりゃ色々あるさ。
辛いモノを見ないようにするのは難しい。
でも、そんなもんその場に置いていけよ。
先の事は誰にも見えねぇ。
無理して照らそうとしなくていいのさ。
見えない事を愉しめばいいだろ。
それが生きてる実感ってヤツなんだよ。
正しく生きるのは確かに難しいかもな。
でも、明るく生きるのは誰にだって出来るんだよ。
菩薩として生きるコツがあるんだ、苦しんで生きる必要なんてねえよ。
愉しんで生きる菩薩になれよ。
全く恐れを知らなくなったらロクな事にならねえけどな
適度な恐怖だって生きていくのに役立つモンさ。
勘違いするなよ。
非情になれって言ってるんじゃねえ。
夢や空想や慈悲の心を忘れるな、
それができりゃ涅槃はどこにだってある。
生き方は何も変わらねえ、ただ受け止め方が変わるのさ。
心の余裕を持てば誰でもブッダになれるんだぜ。
この般若を覚えとけ。短い言葉だ。
意味なんて知らなくていい、細けぇことはいいんだよ。
苦しみが小さくなったらそれで上等だろ。
嘘もデタラメも全て認めちまえば苦しみは無くなる、そういうモンなのさ。
今までの前置きは全部忘れても良いぜ。
でも、これだけは覚えとけ。
気が向いたら呟いてみろ。
心の中で唱えるだけでもいいんだぜ。
いいか、耳かっぽじってよく聞けよ?
『唱えよ、心は消え、魂は静まり、全ては此処にあり、全てを越えたものなり。』
『悟りはその時叶うだろう。全てはこの真言に成就する。』
心配すんな。大丈夫だ。
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